[解説#5]トランザクションの手数料とスピード
ブロックチェーンのトランザクション手数料とスピードとそのチェーン別の比較
この記事は、こん丸のカルダノチェーンに関するレポート(英語)の一部です。
英語版はこちら。
内容:
1. トランザクション手数料
1.a. トランザクション手数料の計算方法
1.b. チェーン別比較
1.c. このセクションの資料
2. トランザクションスピード
2.a. トランザクションスピードの決定要因
2.b. チェーン別比較
2.c. このセクションの資料
1. トランザクション手数料
1.a. トランザクション手数料の計算方法
報酬(reward)が供給側のインセンティブメカニズムであるとすれば、トランザクション手数料は需要側のインセンティブを決定するといえます。トランザクション単価が安ければ安いほど、チェーンはより多くの需要を獲得することになります。一方で、ビットコイン、イーサリアム、カルダノのように報酬の一部が利用者が支払うトランザクション手数料である場合には、エージェントがプロトコルに参加するインセンティブは低くなります。[解説#4]台帳モデル、言語、その他で説明したように、カルダノはUTXOベースのブロックチェーン、より具体的にはeUTXOモデル(extended unspent transaction output)を使用しています。これにより、カルダノのトランザクションは決定論的となり、つまりユーザーはトランザクション実行のコストと、その台帳上の結果をトランザクション実行前に知ることができます。これは、自分以外のネットワーク上のアクティビティがガス代に影響を与えるイーサリアムとは異なる点です。カルダノのデザインは、予期せぬスクリプトの検証失敗、予期せぬ手数料、台帳やスクリプトの予期せぬ更新を防止することができます。チェーン間の取引手数料の違いとその計算方法については、以下の1.b.で説明します。
1.b. チェーン別比較
以下の表6は、チェーン別のトランザクション手数料(米ドルおよびネイティブトークン)を示しています。ネイティブトークンの価格変動が大きく、データソースや日付も異なるため、チェーン間のトランザクション手数料を単純に比較するのは難しいですが、アルゴランド、ソラナ、アバランチなどのチェーンは、総じてトランザクション手数料はほとんど無視できるレベルになっています。テゾスやカルダノも、コレクティブNFTの発行時など一度に大量のトランザクションを行う必要がない限り、トランザクション手数料は十分に小さいといえます。ビットコインとイーサリアムのトランザクション手数料は一定以上の水準に達しており、ユーザーは他の安価なチェーンを利用することを検討する可能性があるといえるでしょう。
表6. チェーン別のトランザクション単位の手数料とその計算方法
1.c. このセクションの資料
🔗 https://docs.cardano.org/plutus/transaction-costs-determinism
2. トランザクションスピード
2.a. トランザクションスピードの決定要因
多くのユーザーはトランザクションスピードが遅いことを嫌うため、トランザクションスピードはチェーンの人気に影響します。故に、トランザクションスピードはブロックチェーンのスケーラビリティの重要な要素の一つです。一般に、ブロックチェーンのトランザクションスピードを決定する要因は、ネットワークにかかっている負荷、トランザクションの複雑さ、新しいブロックの採掘頻度という3つの要素で決まります。ネットワーク負荷はチェーンのその時点での利用状況によって決まり、取引の複雑さはチェーンが採用しているプロトコル・アルゴリズムによって決まり、新しいブロックの採掘頻度は、現在の利用状況とプロトコル・アルゴリズムの両方によって決定されます。
2.b. チェーン別比較
以下の表7は、チェーン別のトランザクション速度の比較をいくつかのデータソースを元に示したものです。一般に、ソラナとコスモスは1秒あたりのトランザクション(Transactions Per Second)がそれぞれ2,825~50,000と10,000で、他のチェーンより速いトランザクションスピードを示しています。両チェーンとも1回のトランザクションにかかる時間はほぼ瞬間的といえます。これに続くのが、アバランチ、アルゴランド、トロン、ポルカドットです。これらのチェーンはすべて1,000~5,000TPSで、1回のトランザクションに3分未満を記録しています。カルダノの速度はこれらのチェーンより少し遅く、約250TPSで、1回の取引に10分程度かかりますが、それでも”the Merge”以前のビットコインやイーサリアムに比べるとはるかに速いスピードです。理論的には、カルダノは(レイヤー2のスケーリングソリューションであるHydraによって)100万TPSを達成でき、”the Merge”後のイーサリアムは10万TPSを達成できる可能性があるといわれています。これらはまだ開発中ですが、将来的にトランザクションスピードを向上させる大きな可能性を秘めています。また、このデータは各チェーンの現在のトランザクションスピードであり、上記の2.aで述べたように、トランザクションスピードは様々な要因によって決定されるものであるので、それらのチェーンの利用者数が大きく拡大しても、現在のトランザクションスピードが維持されるかどうかは不明です。
<表7の資料>
🔗https://www.jumpstartmag.com/5-blockchains-with-the-fastest-transaction-speeds-in-2022/
🔗https://www.blockchain-council.org/cryptocurrency/top-cryptocurrencies-with-their-high-transaction-speeds
🔗https://www.statista.com/statistics/944355/cryptocurrency-transaction-speed/
🔗https://www.analyticsinsight.net/top-10-cryptocurrencies-with-a-high-transaction-speed-in-2022
🔗https://wiki.tezos.com/learn/baking/proofofstake/consensus
2.c. このセクションの資料
🔗 https://www.coindesk.com/learn/cardano-vs-ethereum-can-ada-solve-ethers-problems/
🔗 https://www.blockchain-council.org/cryptocurrency/top-cryptocurrencies-with-their-high-transaction-speeds/






